経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)とは
心臓は全身に血液を送り出すポンプになっており、その出入り口の扉(弁)が壊れてしまう病気が弁膜症です。そのうち、左心室の出口にある大動脈弁の開口部が狭くなった病態が大動脈弁狭窄症です。心臓の出口が狭くなっているため全身の臓器に届けられる血液量が不足し、胸の痛み(狭心痛)や失神発作、心不全、突然死などが生じる恐れがあります。狭心痛がおこってからの余命は約5年、失神発作からは約3年、心不全発症からは約2年程度と報告され、癌と大差ないと言われています。大動脈弁狭窄症は動脈硬化が主な原因であることから高齢化社会に伴い増加しており、現在では65歳以上の人口約3,300万人のうち2~3%にあたる65~100万人の潜在患者がいると推測されています。
重症大動脈弁狭窄症は薬物で治すことができず手術による治療が必要になります。これまでは人工心肺という装置を用い心臓の動きを止めて手術を行っていましたが、高齢者や合併症を持つ方への負担は少なくなく、重症患者のうち4割程度しか手術ができない現状でした。そこで新しく開発された治療が「経カテーテル的大動脈弁留置術」(TAVI)です。
TAVIは主に足の付け根の動脈から通したカテーテルという細い管を利用し、人工心肺を用いず大動脈弁に新しい人工弁を留置する治療です。心臓を止めず小さい傷で行える体に優しい低侵襲手術であり、回復までの期間が短くなる他、これまで何らかの理由で手術が敬遠された方にも手術が可能となりました。国内ではTAVIは主に80歳以上の方に施行されていますが術後は8割の患者が自宅に退院、残りの方は元々入院されていた病院や施設に戻られるなど良好な成績となっています。
徳島大学病院では心臓血管外科や循環器内科など複数の部門でつくるハートチームで相談して各患者様の状態に合わせた最適な治療を提供しております。TAVIは四国の大学病院では最も早い平成29年1月に開始し、これまで200件以上実施しています。