診療紹介

 口の中には歯以外にも歯肉、頬粘膜などの軟組織や舌、唾液腺といった臓器があります。また、歯を支えている歯槽骨や顎骨(上顎骨、下顎骨)をはじめ、口の開閉に重要な役割を果たす顎関節といった特徴的な構造があります。口の中の感覚はとても敏感であり、些細な程度であっても、臓器が障害を受けることは、食事摂取や会話などの日常生活に大きな支障をきたすことにつながります。心臓などの循環器、肺や気管などの呼吸器、胃腸などの消化器等の臓器に病気ができるように、口の中にも病気ができます。口腔外科ではこのような部位に発生した腫瘍、炎症、外傷等の疾患について専門的な立場から診断と治療をおこなっています。

診療時間

主要疾患

埋伏智歯・智歯周囲炎

 最近の日本人の顎の大きさは小さくなってきているものの、歯の大きさ自体には変化がないため、智歯(親知らず)の生えるスペースがない人が多くなってきています。このような智歯は放っておくと智歯周囲の歯肉が炎症をおこして腫れたり、痛みが生じたりすることがあります。また、智歯の影響で健康な手前の歯(第二大臼歯)が虫歯になることもあります。さらに智歯の向きによっては歯並びに悪い影響を及ぼすことから、矯正治療の途中や治療後に抜歯がおこなわれることもあります。以上のような理由から当科では埋伏智歯の抜歯をおすすめしています。

口腔の腫瘍

 口腔にできる腫瘍について診断と治療をおこなっています。腫瘍には舌、歯肉、頬粘膜、唾液腺などの軟組織にできる場合と顎の骨のような硬組織にできる場合があり、病変のできる部位や腫瘍の種類、大きさによって治療法が変わってきます。いくつかの疾患の候補から的確に疾患を鑑別し、適切な治療法を選択するために、CT、MRI、超音波、PET-CT等の画像検査をおこない病変の範囲や大きさ、内部の性状を確認します。また、血液検査などの臨床検査で全身疾患との鑑別をおこないます。さらに治療前に組織検査をおこない最終的な診断を確定します。治療法の選択は、必要充分なインフォームドコンセントをおこなった後に患者さんの意思を尊重して決定します。また、患者さんのQOL(生活水準)に配慮した治療を目指しています。

口腔粘膜疾患

 口の中の粘膜がヒリヒリして痛む、あるいは違和感がとれないといった症状が長期間持続する場合には口腔粘膜疾患の可能性が考えられます。中でも口腔粘膜が部分的に白くなる白板症、レース状の白斑と粘膜の発赤が混在する扁平苔癬は前癌病変ともいわれ、そのうちの数%は癌化することが報告されています。口の中の粘膜に気になる症状がある場合には、かかりつけの歯科もしくは口腔外科での診察をおすすめします。

嚢胞性疾患

 嚢胞とは内部に液状物の貯まった袋状の疾患です。口腔領域では顎の骨にできるものと軟組織にできるものに分類できます。骨の中に嚢胞ができるのは全身的にも顎の骨以外にはあまり見られません。顎骨は歯を支えているため、歯を形成する組織から発生する嚢胞ができやすいと考えられています。大きさは指先程のものから顎の骨の半分くらいになるものまで多様です。細菌感染がなければ自覚症状がほとんどないため、一般歯科医院で撮影するエックス線写真ではじめて見つかるケースもよくあります。一方、軟組織にできるものは粘液貯留嚢胞ともいわれ、多くの場合唾液腺と関連したものです。どちらの場合も外科的な治療をおこないます。

口腔の外傷

 外傷によって歯が抜け落ちた場合、できる限り速やかに歯をもとの位置に戻し、固定することで良好な治癒経過が得られます。その際、歯は乾燥しないよう口の中に入れておくか、生理食塩水などに入れて持参してください。
 顎骨の骨折の場合、骨折の部位、骨どうしのずれの大きさ、噛み合わせのずれの大きさなど総合的に判断し、手術による加療をするか否か決定します。手術をしない場合でも噛み合わせを固定して骨折部位を安静に保つ治療(顎間固定)が必要となります。

インプラント

 歯の欠損した部位に人工歯根(インプラント)を埋め込み咬合を回復する治療です。当科では、補綴科担当医と共診し、従来からおこなわれているインプラント埋入術(2回法および1回法)に加えて、インプラント埋入から上部構造の装着までを同時におこなう方法(即時埋入即時負荷)もおこなっています。また、顎の骨が少なくインプラントの埋入が困難な症例には、骨移植をおこないインプラントの埋入を可能にしています。

顎変形症

 上あごと下あごの骨の大きさが違うことにより歯の噛み合わせがずれている、また顔貌が左右非対称で歪んでいるといった場合、顎変形症の可能性があります。このような場合、審美的な問題だけでなく、ものがうまく咬めない、しゃべりにくいという機能的な問題が生じていることが多くあります。当科では顎変形症に対し矯正科と共診して、歯の矯正治療と顎の外科的な矯正手術を組み合わせることによる治療をおこなっています。

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