ご挨拶
徳島大学病院アンチエイジング医療センター長
松久宗英
世界中で、健康障害を持つ肥満や糖尿病をもつ方が増加しています。その背景には、食習慣の変化や身体活動の低下、運動不足があります。また、世界で最も早く高齢化が進む日本ならでは課題もあります。加齢は、内臓脂肪や様々な臓器の脂肪量(異所性脂肪)を増加させ、メタボリックシンドロームを引き起こし、糖尿病の発症リスクをさらに高めます。これらは心血管病、慢性腎臓病、がんの重大なリスクとなります。最近では、高齢者に特徴的な虚弱体質(フレイル)の原因となる認知症や骨格筋の障害(サルコペニア)のリスクとなることも明らかにされてきました。また、糖尿病は全身の細い血管を傷害し、特徴的な3大合併症(腎症、網膜症、神経障害)を引き起こします。
徳島大学病院アンチエイジング医療センター(Anti-Aging Medical Center:AAMC)では、最新の検診機器および診断装置を用いた糖尿病・メタボリックシンドローム検診を通じ、個々の遺伝背景の解析、病態の評価、動脈硬化症や糖尿病血管合併症の早期診断、さらにサルコペニアの診断を行い、皆様の健康増進と心血管病、腎不全、フレイルの発症予防に貢献します。
また、既に糖尿病を発症した方に対して、最新の糖尿病治療技術の導入から腎障害の重症化予防、さらにフットケアによる足病変の予防をお手伝いします。皆さんのより良い生活の質の維持にお役に立てば何よりです。
糖尿病療養指導
糖尿病ケア外来では、セルフケアができるように血糖測定器や血糖を連続的に測定できる機器の操作方法や自己注射の取り扱い方法等の説明をしています。
2018年度~2020年度実績、在宅療養指導の外来受診患者数、新機器(持続血糖測定器)使用の外来患者数、インスリンポンプ使用患者数※左図参照(図をクリックすると拡大します。)
診察前には持続血糖測定器のレポートをみながら血糖変動を振り返る場を作り、治療と折り合いをつけた日常生活が継続できるように支援しています。また、入退院後は外来をつなぎ、困り事がないかの確認をし、安心して過ごせられるように調整していきます。新薬や新機器を取り入れる療養指導の件数は、増加しています。生活でお困りの事がございましたら、担当医にお申し出ください。
糖尿病透析予防外来
徳島大学病院では、2012年11月に糖尿病透析予防外来を開設しました。
糖尿病腎症の患者さんを対象に、医師・看護師(糖尿病看護認定)・管理栄養士が役割を明確化しチームで指導を実施しています。医師の診察後に、管理栄養士と看護師、患者さんやご家族が同席して実施しています。
糖尿病透析予防外来とは
患者さんが、どのくらい腎臓が弱っているかを理解し、生活の中の改善点を見出せるよう支援します。医師・看護師・管理栄養士がチームで患者さんの腎症の病期を共有し、腎症の病期を一つ前に戻す、または最低でも維持することを目的に、日常生活の指導や食事指導をします。
☆彡お知らせ☆彡
2020年1月25日(土)国立京都国際会議場で開催された第23回日本病態栄養学会年次学術集会のチーム医療対抗戦「糖尿病透析予防チーム」で優秀賞を頂きました。これからも、患者さんひとりひとりに合わせたきめ細やかな指導や支援を目指していきます。
糖尿病透析予防外来の概要
【対象患者】
下記に掲げるいずれかの糖尿病腎症を有する患者
①HbA1cが6.5%以上
②糖尿病性腎症2期(早期腎症期)以上の患者(透析療法を行っている患者を除く)
③糖尿病治療の内服薬やインスリン製剤を使用している外来患者
④徳島大学病院糖尿病外来と内分泌・代謝内科の外来患者
2012-2020年度 糖尿病透析予防外来実績※上図参照(図をクリックすると拡大します。)
【外来日】
月曜日・水曜日・金曜日11時30分と13時00分(完全予約制)
火曜日・木曜日11時30分(完全予約制)
【場所】
外来棟3階 アンチエイジング医療センター
※希望される方は、診察時に担当医師にお申し出ください。
糖尿病ケア外来(フットケア外来)
徳島大学病院では、2005年7月にフットケア外来を開設しました。
糖尿病の合併症である神経障害は傷が治りづらく、血流障害も併発すると足病変と言われる潰瘍や壊疸につながり、足の切断にまで至る場合 があります。その予防のためには、普段からの足のケアが重要です。専門の看護師が、神経障害をもつ糖尿病のある方に対し、足の評価やケアを行い、日常生活での足の観察や手入れの方法を伝え、足病変の予防や悪化しないように支援しています。コロナ禍から休止しておりますが、今後再開を予定していますので、しばらくお待ちください。
フットケア外来とは
1, 糖尿病神経障害、糖尿病性足病変の予防と進展阻止を目的としています。
2, 看護師が一定の時間をかけてケアや指導を行うことで、異常の早期発見や足の見方・ケアの方法が習得できます。
3, フットケアを通して、糖尿病に対する知識や自己管理を維持できるよう支援します。
糖尿病の合併症で、比較的早期に出現する末梢神経障害の予防の1つとして足のケアは重要です。糖尿病と診断された方は、傷ができると治りにくく、傷や熱傷に気づかず重症となることがあります。
⇒ 足がしびれる、足が冷える、まめや靴ずれがある、タコ・ウオノメがある、足に水虫がある等の症状がある方は、フットケアをされることをお勧めします。
フットケア外来の概要
【対象患者】
・徳島大学病院糖尿病外来または内分泌・代謝内科受診者
・下記のいずれかの糖尿病足病変ハイリスク要因を有する患者
① 足潰瘍、足趾・下肢切断の既往がある
② 閉塞性動脈硬化症
③ 糖尿病神経障害
【場所】
外来棟3階 フットケア外来
※フットケアは、月1回保険診療で算定ができます。
フットケア外来の内容
・足の観察や末梢神経障害のアセスメント
・フットバスで温浴
・フットマッサージ
・爪切りや胼胝(タコ)等のケア
・日常生活の指導 など
糖尿病外来受診時、採血を済ませて、外来の診察待ち時間を利用してフットケアを受けられています。
希望される方は、診察時に担当医師にお申し出ください。
糖尿病・メタボリックシンドローム検診
超高齢化社会を世界で先駆け邁進する日本において、単に寿命の延長ではなく、健康で自立した生活ができる健康寿命の延伸が求められています。その障壁が、腹部に蓄積した内臓脂肪を基とするメタボリックシンドロームと糖尿病です。これらの疾患は、心血管病、がん、認知症、筋力低下、骨のぜい弱化など多岐にわたる合併症を引き起こし、健康寿命を脅かします。アンチエイジング医療センターでは、最新の検診機器および診断装置を用いて、メタボリックシンドロームや糖尿病の 病態評価から動脈硬化など、合併症の早期診断、そして将来のリスク因子の抽出を行います。これらを基に、個々に最適な生活習慣から治療の選択肢を提示し、健康寿命の延伸をお手伝いします。ウエストや血糖値が気になるようになれば 、一度受診されることをお勧めします。現在、リニューアルに向けて準備中ですので、ご希望の方はセンターまでお問い合わせください。
AAMCでの検診スケジュール
8:25- 集合
8:30- 検診者全体説明会、絶食・内服確認
8:50- 腹囲測定、血圧・身長・体重等測定
9:00- 尿検査
9:10- 内臓脂肪CT、胸部X-P、血管内皮機能検査(FMD)
9:50- CAVI/PWV、心電図
10:30- 75gブドウ糖負荷試験開始:前採血
※糖尿病患者さんでは75gブドウ糖負荷試験に代わり、合併症検査を行います。検査内容により時間は前後します。
10:35- ブドウ糖液摂取
11:05- 30分採血
11:35- 60分採血
11:40- サルコペニア検査、皮下AGE計測
12:35- 120分採血
12:50- メタボリックヘルスランチ&栄養指導
13:50- 検診説明、アンケート
14:50- 解散
AAMCでの検診項目
【血液・尿検査】
尿検査 (糖、蛋白他の一般検査、尿アルブミン、尿クレアチニン)
血球検査 (白血球数、赤血球数、ヘモグロビン、血小板数他)
血液凝固能検査 (フィブリノゲン)
肝機能検査 (T-bil、GOT、GPT、LDH、γ-GTP、総蛋白、アルブミン)
脂質・尿酸代謝検査 (LDL-cho、HDL-cho、TG、Lp(a)、尿酸)
腎機能検査 (Na、K、Cl、尿素窒素、クレアチニン、カルシウム)
糖代謝検査 (空腹時およびブドウ糖負荷後:血糖、インスリン、HbA1C)
心血管系検査 (B型ナトリウム利尿ペプチド:BNP、高感度CRP)
AAMCでの検診機器
【心電図検査(Electrocardiogram:ECG)】
心電図検査は心臓の機能が正常に動いているかどうか調べます。不整脈や虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症など)の有無、心臓の肥大、電解質異常などの評価ができます。
【脈波伝播速度検査(Brachial Ankle Pulse Wave Velocity:baPWV)】
血管壁を伝播する圧力波の速度のことで、主に動脈のコンプライアンス(伸展性)が評価できます。baPWVが速いと全身の動脈硬化が疑われます。
【血管内皮機能検査(Flow Mediated dilation:FMD)】
FMD検査は、動脈硬化の始まりである血管内皮機能障害をみる検査です。血流の刺激で、血管内皮細胞がNOを放出し、血管が拡張することを利用した検査で、駆血帯で上腕をしめ、駆血前と血流再開後の血管径の変化を超音波で調べます。
駆血開放後の最大血管径と安静時血管径の差と安静時血管径の比を求め、%FMDで評価します。FMDの評価は、健常値の目安は6%以上、5%未満で血管内皮機能障害が疑われます。
【内臓脂肪CT検査】
心血管病発症の原因となる腹部内臓脂肪の量を調べます。メタボリックシンドロームの診断基準では、男女とも面積が100平方cm以上を危険としています。
【頸動脈エコー検査】
頸動脈は全身の動脈硬化の程度を良く反映し、動脈硬化を起こすと血管壁が厚くなったり硬くなったりします。頸動脈エコー検査は体の外から超音波により、『内膜中膜複合体肥厚度(IMT)』という動脈硬化に欠かせない指標を計測したり、血管の壁の状態や血液の流れ、プラークの有無や大きさの評価をします。頸動脈の血管壁の厚さや動脈硬化性変化の有無、血流量や血管弾性の程度を測定します。この検査では主に脳血管疾患のリスクについて評価できます。
【心臓超音波検査(心エコー)】
心エコーは、超音波を体表面(胸部)から超音波をあて、その反射波をモニタ画面に映し出して心臓を調べます。X線と違って被爆の心配がなく苦痛も伴いません。心臓肥大の有無,左心室の収縮能や拡張能の評価,心臓弁の動きや血液の逆流の有無を評価することによって、心臓疾患の有無や心血管疾患の進展度を予測できます。
【サルコペニア関連検査】
加齢とともに生じ、肥満や糖尿病が増悪因子となる筋力の低下(サルコペニア)は、転倒骨折の原因となります。上・下肢の筋肉量や筋力、歩行速度などを測定し、身体機能を評価することで、その早期発見を行います。
ランチ&栄養指導
空腹に耐え検査を受けていただいた後、徳島大学病院栄養部が監修した血管に優しいランチ(エネルギー:631kcal タンパク質25.5g 食塩3.2g)を食していただきます。あわせて、カロリーや塩分など普段から気を付けるべきことについて管理栄養士から楽しく具体的なアドバイスを行います。
検診について
【検診基本コース料金】
・Aコース(基本) ¥50,600円(昼食代込み)※税込み
・Bコース(糖尿病患者用) ¥46,200円(昼食代込み)※税込み
・Cコース(Aコース+心エコー) ¥57,200円(昼食代込み)※税込み
・Dコース(Bコース+心エコー) ¥53,900円(昼食代込み)※税込み
★希望にそってお選びください
●遺伝子検査
6000名以上の日本人・アジア人のデータに基づく肥満や糖尿病のリスクや血管障害のリスクとなる遺伝的素因(疾患感受性遺伝子多型)を解析します。病気のリスクからその対策を提案します。
<日本人の方向け>
・運動&栄養プログラム ¥35,090円※税込み
・糖尿病重症化予防プログラム ¥35,090円※税込み
●アディポネクチン検査 ¥4,400円※税込み
アディポネクチンは脂肪細胞由来の善玉たんぱくです。肥満と共に低下し、続々の合併症のリスクを高めます。徳島大学発のエビデンスにもとずき解析します。
●PET/CT検査(日本語版) 1回につき ¥121,000円※税込み
肥満及び糖尿病はガンのリスクとなること知られております。全身のガンの検査を行うことができます。
【申し込み方法】
メタボリックシンドローム検診は完全予約制です。必ず下記までお電話もしくは最終ページの専用用紙を使用し、FAXでお申し込み下さい。予約時に詳しい受診方法をお知らせ致します。 FAX番号は間違いのないようお願いいたします。
徳島大学病院患者支援センターFAX予約室
(徳島大学病院アンチエイジング医療センター メタボリックシンドローム検診予約係)
TEL (088)633-9106
FAX (0120)335-979
予約時間:平日月曜日〜金曜日の9時〜16時(祝日・年末年始は除く)
検診日は申込日の2週間以後の金曜日となります。
ご本人の確認のため、必ず保険証のコピーを一緒にFAXして下さい 。
FAX予約票をダウンロードする→ 閲覧
【お問い合わせ先】
徳島大学 先端酵素学研究所 糖尿病臨床・研究開発センター
TEL:088-633-7587 FAX:088-633-7589
Email:dtrc@tokushima-u.ac.jp
参照URL:http://www.tokushima-u.ac.jp/dtrc/category_introduction/consultation/medical_tourism.html