遺伝子治療による血管再生療法とは

令和元年9月より、慢性動脈閉塞症に対して遺伝子治療薬が保険適用(条件・期限付き)で使用できるようになりました。この治療を行う施設は全国で限られており、本院は治療を行うことができる施設となっています。

対象疾患:慢性動脈閉塞症

血管の老化に伴う動脈硬化や血管炎症で血管が狭くなったりつまったりして血流が不足する慢性動脈閉塞症と呼ばれる閉鎖性動脈硬化症やバージャー病があります。症状は、足の冷感、しびれから始まり、進行すると歩行などの運動時にふくらはぎや太ももが重くなったり痛みを感じたりするようになります。さらに病気が進行すると安静時でも足の痛みが出て、足先に潰瘍ができると壊死に陥ることがあります。

遺伝子治療による血管再生療法とは

遺伝子治療による血管再生療法

従来の治療法としては、血液をさらさらにする抗血栓薬治療、血管を広げる血管拡張薬治療、カテーテルという細い管を用いて血管を風船で広げる風船治療、ステントという金属の筒を用いて血管を広げるステント治療、バイパス手術で血管をつなげるバイパス治療があります。しかし、これらの治療で十分な効果が得られないと、最悪の場合、救命のために足を切断しなければなりませんでした。

従来治療を行っても足先の潰瘍が治らない慢性動脈閉塞症に対して、遺伝子治療薬が使用できるようになりました。治療方法としては、既存の血管から新たに血管を作る作用がある肝細胞増殖因子を作り出すDNAをプラスミドという遺伝子の運び屋に組み込んで、そのプラスミドを足に筋肉注射で投与します。筋肉細胞内に入り込んだプラスミドは肝細胞増殖因子の産生・分泌を促し、その筋肉で新しい血管を再生させます。つまりこの治療法は血管再生を促す遺伝子を直接足に筋肉注射で投与し、足の血流を増加させ、血流不足で生じていた足の潰瘍を縮小・治癒させることを目指す治療法です。

患者さんへひとこと

この遺伝子治療には、さまざまな適応条件がありますが、足の潰瘍による痛みでお困りの患者さんの新しい治療の選択肢になると思われますので、ご担当の先生と相談して専門病院を受診することをお勧めします。

循環器内科HP