徳島大学脳神経外科の基本方針
徳島大学脳神経外科教室の基本方針として以下の4点を掲げています。
・徳島大学脳神経外科を訪れた患者さんに世界最高レベルの医療を提供すること。
・しっかりとした臨床の実力と人間味豊かな脳神経外科医の育成。
・国際的評価に耐えうる研究業績の発信。
・アジアへの貢献
医局員一同、臨床・研究・教育に取り組んでいます。
お知らせ
2005年4月16日(土)より脳卒中に関するFax相談受け付けます。
Fax番号:088-634-1337
外来を受診される患者さんへ
当院では特定機能病院に指定されています。
かかりつけの先生からの紹介状を御持参ください。
教室の歩み
1.歴史
1974年10月:徳島大学医学部脳神経外科学教室開設(松本圭蔵教授)
1981年10月:第20回日本定位脳手術研究会開催
1989年2月:第2回日本老年脳神経外科研究会開催
1990年11月:第6回日本脳神経血管内手術研究会開催
1994年10月:第53回日本脳神経外科学会総会開催
1995年:第14回日本脳神経超音波研究会学術集会開催
1995年:The 6th International Congress of the International Society for Brain Electromagnetic Topography(ISBET)開催
1996年3月:松本教授 退官
1997年2月:永廣信治教授 就任(熊本大学より)
1999年10月:第2回脳神経減圧術研究会開催
2002年4月:日本脳電磁図トポグラフィー研究会開催
2004年4月:独立法人化 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部、神経情報医学部門情報統合医学講座、脳神経外科学分野に名称変更
2004年5月:第24回日本脳神経外科コングレス総会開催
2006年11月:第22回日本脳神経血管内治療学会開催
2009年3月:第38回日本脳卒中の外科学会開催
2014年5月:第32回日本脳腫瘍病理学会共同開催
2015年3月:第38回日本脳神経外傷学会開催
2015年6月:第2回日本心血管脳卒中学会共同開催
2016年4月:永廣信治教授 徳島大学病院 病院長に就任
2016年10月:第59回日本脳循環代謝学会学術集会開催
2017年3月:永廣信治教授 退官
2017年10月:高木康志教授 就任(京都大学より)
髙木教授 着任の御挨拶
平成29年10月に徳島大学脳神経外科教授として着任しました。当大学脳神経外科は昭和49年10月16日に松本圭蔵先生によって開講され、平成9年2月からは永廣信治先生によって率いられてきた伝統ある教室です。平成11年11月からは全国の国立大学に先駆けて脳卒中ケアユニットを開設し、今では年間300症例以上の急性期脳卒中の患者さんが搬送されます。直達手術、血管内手術により多数の患者さんの治療を行っています。また、脳腫瘍、不随意運動、てんかんに対する外科治療も数多く手がけています。研究の分野においても、脳動脈瘤や脳虚血の分野でめざましい業績を上げています。脳神経外科の領域では、脳動脈瘤や内頸動脈狭窄症、脳動静脈奇形などの分野でその自然歴や外科的治療の成績についてのエビデンスが近年数多く蓄積され、より安全な手術が重要になっています。手術テクニックのマスターのみならず、神経モニタリングや術中血流評価システム、ニューロナビゲーションなどを通して安全な手術が施行されています。また、脳神経外科は脳腫瘍に対する遺伝子解析をベースとした新規治療、頭蓋底腫瘍に対する神経内視鏡の適応など、ますますの進歩が認められる分野となっています。研究においても、私も手がけてきた神経再生を通して、失われた機能を回復させるべく研究が進んでいます。私は脳動静脈奇形、もやもや病、脳動脈瘤などの難治脳血管障害の外科治療を中心に、頭蓋底腫瘍や脊髄腫瘍などの手術も数多く手がけてきました。
これからの若い先生方にも、安全な外科手術ができるようにトレーニングを積んでもらうとともに研究活動も行って論理的思考を持った脳神経外科医を育てていきたいと考えています。
脳神経外科とは
脳神経外科とは 脳神経外科とは脳だけでなく脊髄・脊椎や末梢神経の疾患を外科的に治療する診療科です。
対象となる疾患は、脳卒中と呼ばれる脳出血やくも膜下出血などの出血性脳血管障害や、脳梗塞のような閉塞性脳血管障害、脳腫瘍、三叉神経痛や顔面痙攣、脊髄・脊椎疾患、てんかん、パーキンソン病など非常に多岐に及んでいます。
近年、手術手技の進歩と手術支援器具の発達から、手術は非常に安全になり、以前は手術不可能と考えられていた領域まで到達が可能になっています。
徳島大学脳神経外科の特色
脳血管障害(脳卒中)
脳血管障害とは?
脳血管障害は血管が破裂して出血するくも膜下出血、脳出血と血管が詰まって起きる脳梗塞に分類できます。我々はこれらが起きたすぐからの治療(急性期)とある程度時間がたって再発予防を行う治療(慢性期)の両方を行っています。1999年11月からは発症早期患者様を受け入れて治療を行うストロークケアーユニットを開設して積極的な治療を行っています。
脳血管障害の救急は24時間体制で診察を行っています。
<脳血管障害の治療>
・ くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤の外科治療は開頭によるネッククリッピング術を原則として行っていますが、高齢者の方、動脈瘤が難しい位置にある場合は血管内手術を行う場合があります
・ 脳梗塞の治療は原則として点滴や血液が固まらないような治療(抗血小板剤,抗凝固薬)を行い、脳梗塞の増悪や再発の予防を行います。
・ 慢性期には頸動脈の狭窄部を摘出する頸動脈剥離術や、頭蓋内動脈に頭蓋外の動脈を吻合するバイパス術を行って再発の予防を行うことがあります
<研究活動>
・ 動脈瘤の組織学的検討により、破裂動脈瘤と未破裂動脈瘤の構造的違いを検討しています。
・ 頸動脈狭窄部位の病理学的検討と酸化LDLの分布及び血液中濃度を検討し、狭窄部の性状と酸化LDLの関連を検討しています。
・ 急性期脳梗塞の血中酸化LDLの濃度を検討し、脳梗塞発現との関連性を検討しています。
・ 放射線科と協力し、脳梗塞発症急性期のMRI拡散強調画像、灌流強調画像の特徴とその治療効果を評価しています。
脳腫瘍
脳腫瘍とは?
脳腫瘍には脳の組織から生じる原発性脳腫瘍と多臓器から転移する転移性脳腫瘍に分けられます。原発性脳腫瘍には、神経膠腫(グリオーマ)、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫などがあります。これらの腫瘍に対して必要に応じて手術にて摘出術を行っています。
<もし脳腫瘍が発生した場合>
症状は腫瘍の発生する部位と大きさによって様々ですが、進行性に手足の運動障害や言葉がでにくいなどの症状や急にけいれんで発症することもあります。また、腫瘍が増大してくると頭痛・嘔吐が出現します。脳腫瘍を心配されて来院される患者さんが多いですが、その発生頻度は10万人中6-7人といわれており決して高い数字ではありません。最近では、CT/MRIの普及から、症状を呈していない「無症候性」の脳腫瘍が発見される機会が増えています。治療するかどうかは、患者さんの年齢や社会的状況を十分に考慮して決定しています。
<脳腫瘍の治療について>
脳腫瘍の部位や大きさを考慮して、原則的に手術がまず第1に選択されます。手術には、腫瘍をできるだけ摘出する「根治術」と腫瘍組織だけを調べるために行う「生検術」にわかれます。前者は、全身麻酔下で開頭して行い時間もかかります。後者は、ほとんどが局所麻酔下で行い短時間ですみます。
腫瘍の組織型と残存腫瘍に応じて、放射線治療や抗ガン剤による化学治療を行っています。
<治療の特色>
徳島大学では年間60-70例の脳腫瘍手術を行っています。
・頭蓋底脳腫瘍に対する積極的手術
頭蓋底脳腫瘍とは脳の深部に発生する腫瘍です。難聴で発症する前庭神経鞘腫や頭蓋底部髄膜腫が代表です。これらの腫瘍は、以前では到達不可能であったり、脳の機能障害が問題となっていましたが、我々の施設では、最新のモニターやナビゲーションシステムを駆使して脳の機能を極力温存した低侵襲の手術を行っています。
・成人神経膠腫(グリオーマ)に対する中性子捕捉療法(BNCT)
脳に浸潤性に発育するグリオーマに対して原子炉を利用して中性子を患部に照射する治療を世界に先立てて行っています。その治療成績は世界的に注目を集めています。
・小児神経膠腫に対する集学的治療
小児の脳腫瘍の代表である髄芽腫に対して放射線科と小児科と協力して根治手術、放射線治療および化学治療を行っています。特に、化学療法に感受性があることから、末梢血幹細胞輸血を併用した超大量化学療法を行っています。それまで治癒困難な腫瘍の一つでしたが良好な治療成績は注目を集めています。
脳神経血管内治療
脳神経血管内治療とは
血管内治療は大腿動脈などから細いカテーテル(管)を血管病変の部位に挿入して、血管内側から治療を行うものです。脳神経領域では、脳動脈瘤、脳動静脈奇形、硬膜動静脈瘻、脳動脈閉塞、脳動脈狭窄、血管豊富な脳腫瘍などが治療の対象となる疾患です。脳動脈瘤がコイル塞栓術により治療できるようになり、この治療症例数が増加しています。
当施設では脳神経血管内治療学会の指導医を中心に、昨年は関連病院への出張治療を含めると100例を越える治療を施行しています。血管内治療で全ての疾患が治療できるわけではありませんが、適切な症例を選択すれば低侵襲(患者さんへの負担が少ない)治療が可能です。
徳島大学脳神経外科後期研修プログラム
徳島大学脳神経外科後期研修プログラム
はじめに
脳神経外科で対応する疾患カテゴリーは多岐に渡り、脳血管障害、神経外傷、脳腫瘍、感染性疾患、先天性疾患、脊椎・脊髄疾患や機能的疾患があります。脳血管障害、神経外傷は救急医療の多くの部分を占め、救急医療から慢性期疾患まで幅広く対応します。
様々な脳神経疾患に対応できるように徳島大学脳神経外科では徳島大学病院と関連病院で連携して後期研修を行うプログラムを構築しております。研修病院間で共通の研修医・指導医評価システムを用いて、研修到達目標を明確にし、到達度を客観的に評価しております。その結果を次の研修に反映させております。
このプログラムにより徳島大学脳神経外科では後期研修期間内に脳神経外科疾患を全般的に経験することができ、有意義な研修を行うことができます。
後期研修プログラム
後期研修1年目(卒後3年目)
<研修>
後期研修1年目は徳島大学病院で研修を受けていただきます。徳島大学病院には脳卒中センターが併設されており、国立大学病院でありながら、多くの脳血管障害急性期の患者が搬送されてきます。脳血管障害患者の救急処置と急性期治療を行います。この間、血管内治療を含む脳血管障害慢性期、脳腫瘍、機能的疾患、脊椎・脊髄疾患などの各専門分野の研修を行います。
<到達目標>
検査では腰椎穿刺、脳血管撮影を一人でできるようになることを、手術では穿頭術(脳室ドレナージ術、慢性硬膜下血洗浄術)、開・閉頭の基本手技を獲得することを目標とします。
後期研修2-3年目(卒後4-5年目)
<研修>
この期間は主要関連病院を1年ごとにローテーションしながら研修をつんでいきます。脳血管障害、神経外傷などの救急疾患をはじめ、小児脳神経外科や脊椎・脊髄疾患など、各施設の専門分野の研修を行います。
<到達目標>
急性硬膜外血腫や硬膜下血腫などの外傷に対する手術、脳内血腫除去術や顕微鏡下止血操作などの顕微鏡手術の技能を獲得します。
後期研修4年目(卒後6年目)
<研修>
後期研修3年間の経験をもとに、徳島大学病院で脳神経外科各分野の総合研修を行い、後期研修の“仕上げ”を行います。
<到達目標>
脳動脈瘤や円蓋部髄膜腫手術の基本手技を習得します。
後期研修5年目(卒後7年目)
後期研修プログラムを終了します。卒後7年目に脳神経外科専門医試験受験資格が与えられますので、この年に脳神経外科研修の知識面での集大成である専門医試験を受験します。この試験の合格率は約60%という難関ですが、当教室員の合格率は95%以上を誇っています。
研修終了後、専門分野を選択し、大学院に進学し、脳動脈瘤、脳虚血や脳腫瘍の基礎研究を行うか、さらに、専門分野の臨床の研鑽を積みます。
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一般社団法人日本脳神経外科学会データベース研究事業
一般社団法人日本脳神経外科学会データベース研究事業
(Japan Neurosurgical Database:JND)研究に対するご協力のお願い
当科では「日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database:JND)」に協力しています。
2018年1月から当院脳神経外科に入院された患者さんの臨床データを解析させていただき、脳神経外科医療の質の評価に役立てることを目的としています。
解析にあたって提供するデータは、提供前に個人を特定できない形に加工した上で提供しますので、患者さんの個人のプライバシーは完全に保護されます。
本研究の解析に自分のデータを使用されることを拒否される方は、当院連絡先にその旨お申し出くださいますようお願いいたします。
詳細につきましては下記の閲覧よりご参照ください。
【研究機関】 徳島大学 脳神経外科
【研究責任者】 徳島大学 脳神経外科 教授 高木康志
【連絡先】
徳島大学 脳神経外科 助教 宮本健志
電話番号 088-633-7149
【研究代表者】
山形大学先進がん医学講座 教授 嘉山 孝正
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