診療紹介

 糖尿病は日本のみならず、世界中で医療・保健の大きな課題となっています。とりわけ徳島県では、糖尿病による死亡率が全国的に見ても高い状態が続いております。この糖尿病に関する徳島県の危機的な状況に対処する徳島県の支援を受け、当センターは平成19年10月に徳島大学病院内に設置されました。研究面におきましては、県民の皆様にご協力いただき、徳島県における糖尿病の実態を解明する疫学調査を行っております。また糖尿病の臨床現場での応用を目指した基礎研究・トランスレーショナル研究を行っており、私たちはこれらの研究成果をいち早く糖尿病の医療・保健の現場に還元したいと願っております。その成果の一例として、血液中のアディポネクチンと呼ばれる物質の濃度を測定することで、糖尿病の予備群でもあるメタボリックシンドロームを4-5年以内に発症する危険性を察知できることを見出しました。この技術は徳島大学発のベンチャー企業に移転され、活用が始まっています。またこのベンチャー企業とともに、間葉系幹細胞の休眠による若返り技術を開発し、再生医療への普及を目指しています。診療活動につきましては、徳島大学病院内分泌代謝内科による糖尿病診療に参加しております。

トピックス

疫学調査について

 徳島県では糖尿病死亡率の高い状態が続いているとともに、全人口に占める肥満者の割合も全国有数の高い状態にあります。肥満において脂肪組織から血液中に放出される複数の因子は、インスリン抵抗性を起こして糖尿病の発生に寄与し、また血管に障害を与えて動脈硬化を起こすことが知られています。動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞は糖尿病で死亡する主要な原因です。私たちは、何らかの生活習慣が脂肪組織の異常を誘発し、脂肪組織から血液中に放出される何れかの因子を通じて糖尿病・動脈硬化を起こしているのではないか、と考えています。血糖値上昇など病的な状態となる前にそれを事前に察知する指標を探索すべく、調査にご参加いただいている方々の脂肪組織の状態、血糖値などの経年変化を見ています。また生活習慣に関する詳細な聞き取り調査も実施し、どのような生活習慣が病気につながるかを明らかにする予定です。得られる結果をAIなどの活用も含め、血糖値の上昇が危惧される方々の生活習慣改善に利用し、糖尿病予防に役立てていただきたいと考えています。
 そして平成20年から蓄積している詳細なデータを活用し、健康に毎日を過ごすことへの妨げとなる様々な病気への対策を見出す手段を見出す研究へと、さらに発展させることを目指しています。