診療紹介

クリニカルパス(パス)は一言で表すと標準診療計画です。患者状態と診療行為の目標および評価・記録を含み、医療の安全と質を改善できるツールとして活用されています。クリニカルパスセンターでは、従来紙運用で発展させてきたパスを2017年に電子化し、診療と経営の効率化と質の向上、および医療従事者と患者の満足度の向上を図るための体制づくりに取り組んでいます。
 パスには医療者用と患者用があります。医療者用パスは病院情報システムに組み込まれており、パス適用画面において該当するパスと基準日を選択すると、あらかじめ設定された薬剤、注射、検査、食事、処置、指示等を一括オーダーすることができます。その結果、パスの設定基準日(入院日など)から終了日(退院日など)までの一連のオーダー内容が、簡便な操作で病院情報システムに反映され、診療に関する業務内容が医療スタッフ間で共有されることを実現します。また、実施した診療行為は、適用したパス画面から直接入力することができ、結果の閲覧も可能です。さらに電子パスの両面では特定期間の表示だけでなく、設定基準日から終了日までを俯瞰できるオーバービュー画面や1日表示の日めくり画面に切り替えて閲覧することができます。一方、患者用パスは診療の経過を1枚の用紙にまとめてあるので、患者・家族が事前に説明を受けることにより、自身の検査や治療の流れを容易に把握でき、インフォームドコンセントの充実、自己管理意識や満足度の向上につながります。
 パスを有効活用するためには、未達成目標(バリアンス)の情報を収集し、診療の経過が標準的計画から逸脱していないかを把握することが重要です。バリアンスが生じれば、標準からの偏位を分析し、計画を見直して新たに実践するといったPDCAサイクルを繰り返すことで、医療の標準化と質改善につながります。その実現のため、クリニカルパスセンターでは、日本クリニカルパス学会が提供しているBasic Outcome Master(BOM)を活用し、パス利用の本来の目的であるアウトカム志向の運用を目指しています。さらにBOMを活用した電子パスの運用と分析は、医療機関同士のベンチマーキングも可能とし、施設間の比較から、診療のみならず経営的な付加価値も見出すことができます。
 医療現場では、診療業務の質向上や効率化だけでなく経営改善の戦略が求められています。同時に病院の継続的な発展と職員・患者の満足向上を実現するために、クリニカルパスセンターは、今後さらに重要性が高くなるパスの充実した管理・運用を目指します。

主な活動内容
(1) パスの作成と運用の推進
(2) マスタ管理
(3) パス評価
(4) 報告会および研修

体制
クリニカルパスセンターは、センター長、副センター長、医科・歯科医師、看護師、薬剤師、診療情報管理士および病院情報センター職員等が構成員として配置されています。