放射線治療とは
放射線治療はがんとその周辺のみを治療する局所治療です。
放射線は手術、抗がん剤とともにがんの治療の中で重要な役割を果たしています。放射線は手術と同じく、がんとその周辺のみを治療する局所治療です。手術と異なるところは、臓器を摘出する必要がなく、臓器をもとのまま温存することができ、そのため治療の前と同じような生活をすることが可能な治療手段であることです。
放射線が、がん治療の手段として使われはじめてからおおよそ100年がたちますが、その間に放射線治療機器、放射線生物学やコンピューターが発達し、放射線治療は急速に進歩してきました。がん組織に多くの放射線量を照射し、周囲の正常組織にはできるだけ少ない量の放射線を照射することができるようになってきて、がんを治せる可能性が高くなり、しかも副作用の少ない放射線治療が実現してきています。
放射線治療装置と照射方法
●外部放射線治療
高いエネルギーのⅩ線を体の外から患部に照射し治療します。
リニアックという装置を使用します。
一日一回~二回の治療を数週間に亘って行います。一回の治療は数分で終了いたします。患者様が痛みなどを全く感じることのない治療です。
●定位放射線治療
脳や肺などの小さな病変に対し、放射線を多方向から照射して病巣に放射線を集中させる治療法です。
当院では高精度放射線治療装置を用いて、マスク固定による痛みのない治療が可能です。主に転移性脳腫瘍、原発性肺がん、転移性肺がんなどに対して積極的に実施しております。
●強度変調放射線治療(IMRT)
病巣の形状に合った高い線量の投与を行うことが可能となり、治療効果の向上と副作用の軽減が期待されています。当院では現在VMATと呼ばれる回転型のIMRTを実施しており、より短時間に治療を行うことが可能です。脳腫瘍、頭頸部がん、前立腺がんをはじめさまざまながんに対してVMATを実施しており、年間に100例を超す患者様の治療を行っています。
●小線源治療
放射線を出す小さな金属を患部に密接させるか、埋め込んで照射をする方法です。この治療により病変部に放射線を集中させることができます。当院では主に婦人科がんや前立腺がんに対し行っています。
前立腺がんに対するヨウ素125永久挿入療法は平成16年に四国で最初に開始し、現在約800例の治療実績があります。
脳腫瘍
原発性脳腫瘍の場合、手術後の再発予防のために用いられることがあります。
定位放射線照射を用いれば、小さな病変であれば手術に匹敵する治療法となることもあります。
頭頸部がん
放射線治療の大きな利点は、臓器の機能や形態が温存されるという点にあります。
頭頸部がんに対し、現在当院では強度変調回転放射線治療(VMAT)を中心に行っており、これまで放射線治療後の副作用として問題となっていた唾液腺機能低下(唾液が減り口の中が乾く)が軽減できるようになってきました。
また、可能であれば抗がん剤を同時に併用することで治療効果が高められます。副鼻腔がんなどでは血管内にカテーテルを挿入し、がん病巣に直接抗がん剤を注入する方法を用いています。
抗がん剤を使用する場合には副作用として、腎機能障害や骨髄抑制が問題となりますので、入院のうえ十分な管理のもとで治療を受けていただきます。
食道がん
表在がんから遠隔転移を伴わない進行がんまでが治療対象となります。
一般に進行がんに対して適用されていることが多いですが、最近では表在がんにおける治療成績も手術と比べて同等であることがわかっています。
治療は外部放射線治療を主体に行い、小線源治療を組みあわせることもあります。
治療期間は約7週間必要です。
現在は、抗がん剤を同時に併用することが有用であることがわかっておりますので、抗がん剤使用が可能な場合は併用いたします。
副作用として、抗がん剤を使用する場合には腎機能障害や骨髄抑制が問題となりますので、入院のうえ十分な管理のもとで治療を受けていただきます。
放射線治療特有の副作用として、治療中の食道炎による飲み込み時の痛みがありますが、治療終了後は徐々に改善します。
肺がん
新たに集光照射法が開発されました。
一般に手術が困難なサイズのがんで遠隔転移を伴わない場合に放射線治療対象となりますが、新たに開発された集光照射法では早期がんに対しても治療が行われており、手術に匹敵する治療成績が報告されています。
治療は外部放射線治療を6週間かけて30回程度行います。現在は、抗がん剤を同時に併用することが有用であることがわかっておりますので、抗がん剤使用が可能な場合は併用いたします。
副作用として、抗がん剤を使用する場合には腎機能障害や骨髄抑制が問題となりますので、入院のうえ十分な管理のもとで治療を受けていただきます。
放射線治療特有の副作用として、治療中の食道炎による飲み込み時の痛みがありますが、治療終了後は徐々に改善します。
また照射された肺の部分は必ず治療終了後に放射線による物理的な肺炎を生じますが、この炎症が拡大して重篤な副作用となる場合もあります。
子宮頸がん
30年以上に亘る歴史がありその方法は確立されております。
子宮頸癌の放射線治療は30年以上に亘り同じ手法で治療が行われており、その方法は確立されております。
早期がんから遠隔転移を伴わない進行がんまでが治療対象となります。日本では一般に進行がんに対して適用されていることが多いですが、欧米では早期がんにおいても第一に用いられる標準的な治療方法です。
早期がんにおける治療成績も手術と比べて同等であることがわかっています。
治療は外部放射線治療と、小線源治療を組みあわせて行い、治療機関は約6週間必要です。
現在は、抗がん剤を同時に併用することが有用であることがわかっておりますので、抗がん剤使用が可能な場合は併用いたします。
副作用として、抗がん剤を使用する場合には腎機能障害や骨髄抑制が問題となりますので、入院のうえ十分な管理のもとで治療を受けていただきます。
抗がん剤を使用しない場合は副作用は一般に軽度です。放射線治療特有の副作用として、治療終了後半年以後に生じる晩期障害があります。当院での約800人の患者様の治療で約4%に、手術を要する晩期障害が主に腸に生じています。
前立腺がん
外部放射線治療と小線源治療の2つの方法があります。
外部放射線治療は強度変調回転放射線治療(VMAT)を中心に行っており、約8週間かけて1日15分程度の放射線照射を39回程度受けていただきます。外来での治療が可能です。
小線源治療は、当院では平成16年よりヨウ素125永久挿入療法を開始しており、約800例の治療実績があります。放射線を出す小さな線源(カプセル)を皮膚から刺した針を通して前立腺内に留置いたします。3泊4日程度の入院が必要です。
また、より進行したがんに対しては小線源治療と外部照射を組み合わせた治療を積極的に行っております。
悪性リンパ腫
全身疾患としての傾向の強い悪性リンパ腫の治療の主体は化学療法ですが、悪性リンパ腫の腫瘍細胞に対して放射線は非常に強い効果を有します。
化学療法で完全に消失させることができない様な大きな塊を形成した病巣の部分に放射線照射を併用することで治療成績が改善することがわかっています。
また、病気が拡大することの少ない一部の悪性リンパ腫では放射線治療単独でも治癒させることができます。
緩和的放射線治療
がんによる痛みの治療として放射線治療は大きな役割を果たしています。
色々な臓器のがんの骨への転移による痛みに対して放射線治療を行うことにより約80~90%の患者様の痛みの緩和が得られます。約50%の患者様で痛みが完全に消失いたします。
治療は体の外から痛みの原因となっている患部に放射線を照射します。一般に一回3分程度の照射を2週間の間に10回行う方法が用いられますが、体の調子が悪く何回も治療室に来ることが困難な患者様に対しては更に少ない回数でも十分な効果が得られます。1回の照射でも痛みがとれる可能性があります。
他には、がんの進行により顔や手足がむくむ場合やがんが神経を圧迫することにより生じる麻痺に対しても有効となります。
高精度放射線治療装置 ノバリスTX
ノバリスTXとは脳、頭頚部だけでなく、脊椎や肺、肝臓、前立腺などの体幹部にも適応可能な定位放射線治療装置です。
高精度放射線治療装置 TrueBeam
最新の高精度放射線治療装置で、定位放射線治療や強度変調放射線治療(IMRT)などを短時間に行うことが可能です。
高精度放射線治療装置 Radizact
強度変調放射線治療(IMRT) 専用装置Radixactが2020年5月から稼働しています。IMRTは、がん周囲正常組織の線量を低減し病巣に高い線量を集中させることで、局所制御率を向上させ、副作用を軽減できる照射法であり、限局した悪性腫瘍のすべてに保険適用されます。主な対象疾患は脳腫瘍、頭頚部腫瘍および前立腺癌ですが、最近では肺がんなど胸部腫瘍へ適用を拡大しています。他の2台の外部放射線治療装置に無い本装置の特徴として、広範囲に及ぶ病巣でも対象とできる点があります。例えば頭頚部腫瘍と食道がんが同時重複している場合も一連の病巣として同時に照射することが可能です。また、画像誘導放射線治療(IGRT)システムを搭載しており、画像診断技術を駆使して正確にがんに放射線を照射することができます。
密封小線源治療
・前立腺癌ヨウソ125永久挿入療法
・婦人科腫瘍の腔内照射、組織内照射
・乳がんの組織内照射
放射性同位元素内用療法(核医学治療)