はじめに

Quality indicator (QI)とは?

「質を表す指標」であり、医療分野においては、患者さんの健康の度合いを直接あるいは間接的に示す数値を意味します*。
その定義としては、「患者さんの健康は、身体的側面(病気に罹るかどうか、痛みなどの自覚症状や麻痺などの他覚的徴候を有するかどうか等)・精神心理的側面(不安感やうつ症状の有無、満足度等)・そして社会的側面(医療費、日常生活への悪影響等)から捉えられます。また直接的に表す指標とは、例えば病院内で感染症がどのくらい起こったかという数値となります。その場合の間接的な指標とは、例えば院内感染を防ぐために職員がどのくらい手指の消毒を行ったかを示す数値ということになります。」とあり*、具体的な数値として示されます。

QIには様々な項目があり、また、色々な算出方法があります。これは、病院の役割(特定機能病院か、急性期病院か、慢性期病院かなど)や、各地域に特有の社会的背景(高齢化・人口密集または過疎・医師の配置状況)などがあり、その病院に特有の“質”を評価する指標が必要であるからと考えられます。多くの病院がこのQIを公表していますが、欧米のように統一されたQIがない本邦の現状では、このQI公表の意義は、「病院の職員がQIの測定結果を精査し、不足や不十分な点に関して改善を図り、その結果として提供している医療の“質”が向上し患者さん、ひいては社会に還元されることにある」と考えられます。
したがって、QIを測定・公表している他施設と、データの単純比較を行い、「少なくとも全国平均の医療の質が保たれている」ということを目指すことも重要ですが、上記の理由によって、現時点では単純に医療の質を比較することにはなりません。やはり、自院のデータを時系列で追跡し、自院の職員へのフィードバックを通じて対策・改善策を議論し、それが有効であったかの継続的な観察を行うことが最も重要と考えられます。

*日本病院会におけるQIプロジェクト https://hospital.or.jp/qip/index.html
**Quality indicator [医療の質]を測り改善する 福井次矢著 インターメディカ社 2020年